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執筆者の写真plusrelax

トップの写真について

HPのデザインをちょっといじってみました。新しいものはいかがでしょうか。

さて、トップページには以前から1枚の写真を用いています。この写真ですね。⇩




この写真は何なのか、について今日は書いてみたいと思います。



これは、ドイツのミュンスターという街で撮った写真です。シャッターを押した瞬間に、ちょうど散策している二人の足並みがそろって、面白い写真になりました。ミュンスターは、オランダが独立を勝ち取ったウェストファリア条約(ミュンスター条約)が締結された地として歴史に名を刻んでいます。



今日のミュンスターはあるイベントでも有名です。ご存じの人もいらっしゃると思いますが、そのイベントとは「ミュンスター彫刻プロジェクト」というものです。10年に1度開催されます。



ミュンスター彫刻プロジェクトは、「彫刻」という言葉がついていますが、実際には彫刻に限らず、平面や映像、立体などなどを含めた総合的な現代アートの祭典です。この写真を撮ったときも、それを見るために訪れていました。2017年のことになります。



近年、日本でも現代アートの祭典が花盛りです。ヨコハマトリエンナーレや越後妻有アートトリエンナーレ、中之条ビエンナーレ、あいちトリエンナーレなど、「国際展」とうたって大規模に行っているものも少なくありません。ミュンスター彫刻プロジェクトは、そのようなアートプロジェクトの草分けと位置づけられるもので、第1回は1977年に開かれました。



ミュンスター駅前に設けられていたサービススポット



この祭典の素晴らしいところは、市民の手づくりのものだという点です。企業や行政の主導ではなく、ミュンスターの市民一人ひとりが能動的主体的に関わり、トップダウンではなくボトムアップでつくり上げられています。1970年代に早くもそのような活動が立ち上げられていたというのは相当早いと思います。ただ、基本的に市民の手づくりによるため、そう頻回に開くことはできず、10年に1度という長いインターバルになっているわけです。訪れたときも、プロジェクトが生まれて40年が経っているのに、まだ5回目でした。



トップの写真に話を戻すと、これを撮影したのは市街中心部から少しはずれた場所で、背景にはアー湖という水辺が映っています。アー湖の周りは公園になっていて、パブリックアートの作品が点在しています。この写真には3つの大きな玉がありますが、これも作品です。クレス・オルデンバーグの《ジャイアント・プール・ボール》というもので、1977年の第1回展で出品され、そのままパーマネント・コレクションとして公開されています。



好き嫌いはあるかもしれませんが、《ジャイアント・プール・ボール》があることによって、公園の景観にアーティスティックな趣が付け加えられているように感じます。それは、もし、この作品がなかったらと想像してみると、きれいな公園ではあるけれど、どこにでもある公園でしかなかっただろうと思われることからわかるように思います。



ミュンスターの街には、この《ジャイアント・プール・ボール》だけではなく、さまざまなアート作品が市街各所に設置されています。それらは各回のプロジェクトの成果です。プロジェクトが重ねられるにつれて、街中のアートは増殖していきます。つまり、ミュンスターは、市民によってアートの祭典が営まれ、その成果が積み上げられ、市民によって街の “アート度” が発展・成熟していっているのです。人々は街を散策しながら、それらを楽しみ、刺激を受け、視野を広げ、あるいはときに何かを考えるのです。



市街中心部にあった作品。運搬してきた大型トレーラーも

作品の一部と見なしているようでした



ミュンスターの街はすばらしいな、とプロジェクトを見学して羨ましい気持ちになりました。たぶん、裏側ではさまざまな現実的な問題もあるはずですが、ともあれ総体的に人々はアートでミュンスターの街を発展させていこうと取り組んでいるのでした。そして、ミュンスター彫刻プロジェクトは、(私たちが日本から訪れたように)いまや世界中から人が集まるイベントに育っています。私たちが乗ったタクシーのドライバーは、「この祭典があるからミュンスターなんだよ」と語っていました。



ミュンスターのケースは、アートと市民の関係、アートが社会になしうることを考えるうえで多くの示唆に富んでいます。そして、それらが象徴・集約されたのがトップの写真であるように思います。たまたまスナップした1枚ですが、ここには、ミュンスターの人たちと同様に、プラスリラックスがめざしているものも映し出されている気がします。



以来、私たちはこの写真をトップに掲げ続けています。いまではプラスリラックスのアイデンティティ・イメージとなりつつあるように思います。いつか、私たちの社会もこのように、という願いを込めて。


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