大変ありがたいことに、先週から弊誌『パレット』のご注文が各地から寄せられています。はじめは秋田と熊本から始まって、その後、岡山、長崎、長野、青森、山形、愛媛、島根、埼玉へと広がり、今日は鳥取方面からのお求めを朝から頂戴しています。
最初のうちは、いったい何事だろうと思っていましたが、各地の地方紙に記事が掲載されているためだとわかりました。「アート鑑賞のヒントがコーヒー1杯分で」といった見出しで『パレット』が紹介されており、ご興味を抱いてくださった方がお電話をくださったり、ネットショップでお買い求めくださったりしているのです。
時間帯によってはお電話を切ったと思ったら、またかかってきたり、毎日発送にかなりの時間がかかったりで、こうした、いわゆる “うれしい悲鳴” をうちが上げることになるとは思っていなかったので、少し大げさにいえば夢みたいです(笑)。
ところで、ご注文は、お電話、ファクス、ネットショップ、メールと4つのルートでいただいています。もちろん、どの方法でご連絡いただいてもありがたいのですが、お電話でのコンタクトを頂戴するときふと考えさせられることがあります。
端的にいえば、お電話はお客さまと生で会話することが、やはり強く印象に残るのです。便利さということでは、ネットやメールのほうが聞き間違いや勘違いがないというメリットがありますし、時間を選ばない魅力もあります。それに比べると、電話はいまとなっては一昔前のツールというイメージがあるかもしれません。が、電話の持つダイレクトに人と人をつなげるという機能はやはり強力なのです。
あまりステレオタイプな見方はしないほうがよいのですが、地方の方は都市部の人間に比較して、やはりオープンマインドというか、あまりバリアを張らずに当方へご連絡くださるようで、ご用件以外のこともしばしお話しくださる方が多くいらっしゃいます。
「こんど娘の絵が美術展に出品されることになって嬉しい」とか「近い将来、地元に県立美術館ができる予定で、いまから楽しみ」といったお話をしてくださいます。お気持ちがダイレクトに伝わってきて、その喜びや待ち遠しい気持ちがこちらにも伝染します。
そんなお話をすることで、これまで知らなかった土地に一気にある種の親しみを覚えるようにもなります。うかがったご住所をあとで地図に照らし合わせて、ああ、このあたりにお住まいなのだな、と想像してみたり。
テクノロジーの進歩は利便性をもたらした反面、人と人の結びつきを疎遠にした、などとはよくいわれることですが、こんなところにも現れるのだなと一種の驚きを覚えます。
私たちが『パレット』をネットメディアではなく、紙のメディアとしたのも、同種の問題意識からでした。とはいえ、いまやテクノロジーの利便性を否定することはできないのも事実です。実際、私たち自身、このようなブログを書いたり、HPをつくったり、ネットショップを営んだりしているわけで、テクノロジーを活用するところは活用するのは、もはや避けられない時代の流れではあります。あるいは、テクノロジーがかつては望めなかった結びつきを可能にしているという面もあります。
それだけに、人間的なものもやはり大事にしていかないといけないと改めて感じさせられるわけです。ネットやメールといったテクノロジーを使っていても、それをただシステムとして見るのではなく、向こう側には血の通った人がいることを忘れてはならないのだ、と自分に言い聞かせている次第です。
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